妊娠線の予防方法〜確固たる方法はない!でも現時点では自分ならツボクサエキス・ヒアルロン酸含有の外用製剤を勧める〜

striae_gravidarum 妊娠・出産
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そもそも妊娠線とは?できる原因は?

妊娠線『striae gravidarum:SGもしくはstretch marksとも呼ばれる』とは,妊娠女性の2人に1人,もしくはそれ以上の頻度で現れるもので,妊娠における一般的な体の変化として女性の間では馴染みのあるものでしょう.

SGは萎縮性線状瘢痕を呈し、痛みを伴い,妊婦さんの生活の質の低下にもつながります.しかしながら,SGは美容・審美的な問題として見過ごされがちで,よって女性の心理的な負担として生涯に渡って遺るものと考えたほうがいいでしょう.

妊娠線は初期はピンク〜赤色の帯のようなものが皮膚に現れ,数ヶ月から数年をかけて,傷痕のような,もしくは皺のような,萎縮性の瘢痕として皮膚の緊張線に平行に現れます.色調も次第に赤みが引いてむしろ低色素状になることもあるようです.またかゆみや灼熱感,不快感を引き起こし,典型的には胸部や腹部,腰部,および大腿部に存在します.

リスク因子としては妊娠の年齢(若いほどリスクが高い)や男児妊娠,家族歴や教育レベルなどが挙げられておりますが,あくまで観察研究の結果であって,まだまだ仮説の段階です.

このあたりは文献1および2を参照すると良いでしょう.次の段落の解説にも少し引用しております.とてもよくまとまっております[1][2]

妊娠線は予防できない?どの方法でも実際は効果は期待薄

妊娠線の歴史はとても古く,古来より常に妊婦さんの苦痛の原因となっています.古くはなんと紀元前16年頃(!)に,詩人オビッドが、妊娠線を避けるために女性に対して妊娠を控えるようほのめかしていた,なんて記載もあります().古代エジプト人はSGの治療のためにいくつかの対策を練っており,例えば第1世紀ではSoranusらはオリーブオイルと海塩を用いていたようです().

歴史のウンチクはさておき,古今東西妊婦さんたちを悩ませていた妊娠線,予防方法はあるのでしょうか?

試しにネットで「妊娠線 予防」などと言葉を入れて検索してみると,関心の高いテーマなのか,非常に多くの情報が良くも悪くも溢れ出てきますね.その中に例えばココアバタークリーム『cocoa butter cream』なるものがサプリメント(?)として通販でも売られているのですが,ツイートの通り根拠を探してみるとあらびっくり,統計的な有意差もなく,妊娠線の予防に寄与できるとはどうも言えないようですね.

他にも何か良い方法がないのかなぁとあれこれ探してみたのですが…

コクランからの貴重な報告です.有効成分もしくは製剤としてAlphastria,Trofolastin,Verum(こららは商品名なのでしょうか?かろうじてAlphastriaとTrofolastinだけはネットで確認が取れました),オリーブオイル,ココアバターなどで,ビタミンEも併用、さらにAlphastriaとVerumはヒアルロン酸も含んでいました.

が,ツイートにあるように,どれもこれだ!と胸を張って万人にルーチンでおすすめできるような結果は得られていないようです.2012年とやや古い報告なのですが,これはなかなか妊婦さんにとってショックな事実でしょう.

それでも何か試したい!と言われたら?〜わたしならこうする〜

【医療者へ】
ただ,ここからがEBMerとしてのある意味本領発揮領域です.エビデンスが限定的もしくは効果が否定的である場合,それでも患者さんやご家族さんから相談を受けたら,何か試したいという願いを聞いたら,どう行動しましょうか.

再度情報を探してみたところ,コクランからの報告から翌年の2013年以降に,やはり限定的ではあるのですが,ツボクサ(Centella asiatica)やヒアルロン酸などを含有している外用薬が妊娠線の新規発症の抑制や発症後の重症度の改善効果が期待できるのではないかという報告がありました[3]

もちろん先のコクランで解析対象となった製品にもこれらの成分は含まれており,この結果を以ってやっぱりこういう成分が有効だ!だからみんなに勧めよう!などとは口が裂けても言えないのですが,せっかく相談にきてくださるお客さんや患者さんに,「何も有効なエビデンスがない」だけを言うだけで,それで本当に患者の悩みが解消されるのかと言われればNoでしょう.とはいえだからと言って生半可な知識や理論だけで怪しい製品を勧める訳にもいきません.

現時点で,現場に適用可能な情報を十分に精査して,その妥当性を繰り返し振り返りながら患者に向き合うのがエビデンスの活用,EBMの実践に他なりません.

【一般の方へ】
「現時点での情報の確度は低いですが,強いて言えばツボクサエキスとヒアルロン酸が含まれる製剤が妥当であると考えております.何も対策をしないよりは良いでしょう.いかがでしょうか?日本では最近とある企業さんが製品を出しているみたいです.そこまで高価でもなくコストパフォーマンスも合格点ではないでしょうか」というのが今のぼくから進められる最良の情報です.

妊娠線対策から、赤ちゃんの肌ケアまで! 酸化防止ボトルのボディクリーム 
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https://www.excite.co.jp/News/release/20180529/Dreamnews_0000174565.html

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注意!別にこの企業からCOIがあるわけではありませんよ!!

終わりに

【一般の方へ】
いかがでしたでしょうか?もしかしたら読者のみなさまの中には確固たる正解を求めてこちらにいらっしゃったのやもしれません.

しかしながら,現場はそう単純なものではありません.予防でも治療でも,誰もが助かる・誰でも効果が実感できるような夢の対処方法と言うものは幻想にすぎません.

「〇〇には▽▽が絶対おすすめ!」などという安易なオツムの足りない記事を書くことも可能なのでうすが,少なくともぼくはそんなことはしません.したくありません.誇張をした製品の宣伝は結局はお客さんや患者さんにとって無益な,そして時に有害にすらなり得るからです.

ただ,その中でも「現時点での最良なやり方」は提示できます.それが現時点ではツボクサエキスとヒアルロン酸が含まれる塗り薬」です.当然,明日になればもっと良い方法が発見され,世に公表されることもあるでしょう.その時はまた,その情報を吟味して,活用すればいいのです.ぼくも情報を営為追いつつけて更新してゆくつもりです.

【医療者へ】
現場にいるといろんな疑問が湧いてきますし,患者さんやお客さんから,思ってもみないような質問を受けることがあるでしょう.それが臨床の醍醐味であり,自分の知性を鍛える場でもあります.

ただし,時には(と言うかむしろ?),はっきりと正解の出せない・答えのない疑問もあるはずです.それにぶち当たった時こそ自分の知性が試される時です.

知ったかぶりせず,お茶を濁すようなこともせず,エビデンスという科学的根拠なるものを批判的に吟味して,その場にビクビクしながら,けれども自分なりの「みたて」を持って患者さん・お客さんに提示して,来局される人たちの悩みを一緒に解消してゆくようにしましょう.

それが,まさしくEBMの実践なのですから.

参考文献

[1] Farahnik B, et al. Striae gravidarum: Risk factors, prevention, and management. Int J Womens Dermatol. 2017;3(2):77-85. PMID: 28560300
[2] Ersoy E, et al. Is it possible to prevent striae gravidarum?. J Chin Med Assoc. 2016;79(5):272-5. PMID: 27056109
[3] García hernández JÁ, et al. Use of a specific anti-stretch mark cream for preventing or reducing the severity of striae gravidarum. Randomized, double-blind, controlled trial. Int J Cosmet Sci. 2013;35(3):233-7. PMID: 23237514

PubMedのリンクを載せているマトモなサイトもありました.英語ですが,よろしければどうぞ.
https://eraorganics.com/blogs/skin-care/how-to-get-rid-of-stretch-marks

[おまけ]
有料で全文見れませんが,国内でもツボクサの臨床研究があるようです.学会発表レベルですが.
ツボクサ葉(Centella asiatica L.)の火傷の皮膚再生に対する作用およびその活性成分と作用機構
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902234721226053