添付文書には”正解”も”答え”も書いてない

添付文書 日常業務・業務改善
添付文書

pharmasahiroです.

添付文書,どう活用していますか?

日頃の業務で医薬品の安全な使用と患者さんの安心を確保すべく奮闘する中で,
どうしても確認するのを避けては通れない添付文書.

みなさまどのような心持ちで添付文書と付き合って居るでしょうか.
時折,医師からの問い合わせでも患者さんからの質問でも,
はたまた個別指導対策でも,

「添付文書にこう書いてあるからそれが正解だ」

などと,あたかも添付文書が「全ての答えが書いてあるもの」
と捉えてしまうことが,
意識するしないを問わず生じてしまうのではないでしょうか.
(これはあくまで自分の体験談です.悪しからず)

添付文書だけでは何も行動できないはず

しかし,真に医薬品のことを勉強すると,

添付文書の文言は,
疑問に対して応えを創造する第一歩にはなり得るけれど,
それだけで決してそれ以上のことは何も書いていないし,
ましてや自分たちがどう行動すべきかは何ひとつ教えてはくれないものだなぁと痛感しております.

例えば, 糖尿病治療薬のメトホルミン(商品名:メトグルコ®︎).
添付文書には次のようにな警告があります.

【警告】
重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがあり
…(中略)…腎機能障害又は肝機能障害のある患者,高齢者に投与する場合には,
定期的に腎機能や肝機能を確認するなど慎重に投与すること.(以下略)

また,その下の禁忌には次のようなことが書いてあります.

2) 中等度以上の腎機能障害[腎臓における本剤の排泄が減少する].

まるで,腎機能が低下している患者や高齢患者には絶対に,絶対に,
ぜーーーーーったいにメトホルミンは投与してはならない,
という風に見て取れる文章に思います.

添付文書の内容も批判的吟味せよ

ところがです.
今年の報告によると[1]

2型糖尿病患者のメトホルミン使用による乳酸アシドーシスは
eGFR<30 mL/min でハザード比 HR 2.07 (1.33〜3.22)と増加するが
eGFR>30 mL/min では増加するとは言えない

という結果が出ております.

eGFRが30 mL/min 以下というと,ちょうど上記の「中等度以上の腎機能低下」に該当します.
(eGFR値による腎機能の分類に関して日本腎臓学会の以下URLをご参照ください)
https://www.jsn.or.jp/ckd/pdf/CKD01.pdf

ということは,腎機能がなかなかに低下している患者さんにも,
場合によってはメトホルミンを使うことができるのではないでしょうか.
もちろん消化器症状や乳酸アシドーシスといった致死的な有害事象の兆候がないかどうかのモニタリングは必要だとは思います.

また,同じく最近の日本からの報告では[2]
日本人でもメトホルミンは安全に2250mg/日まで増量はできますし,用法も1日2回と3回とで血糖低下作用や有害事象の発生頻度に差があるとは言えない
と言われております.

メトホルミンは糖尿病治療薬の第一選択として,
もっともっともっと(しかし安易にではなく)現場で活用して欲しい薬剤でもありますが,
投与頻度が分3ですと患者さんもなかなかに飲みにくいものではあります.
(そして残薬が発生する…)
ですが,こういうことを知っているかどうかで,1日2回への変更提案も,より根拠を持ってできるのではないでしょうか.

まとめ

繰り返します.

添付文書の記載内容は勉強の出発点にはなり得るけれど,
決して答えが書いてあるものではありませんし,
それだけに基づいて患者の安全は確保できません.

もっともこれはエビデンスだけで物事が決まらないということでもありますが,
少なくとも添付文書だけが薬剤の安全使用のための唯一の指標にならないようにしたいものです.

今日はここまで.
それでは▽

参考文献:
[1] Lazarus B, Wu A, Shin J, et al. Association of Metformin Use With Risk of Lactic Acidosis Across the Range of Kidney FunctionA Community-Based Cohort Study. JAMA Intern Med. Published online June 04, 2018. PMID: 29868840
[2] Kanto K, Ito H, Noso S, et al. Effects of dosage and dosing frequency on the efficacy and safety of high-dose metformin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. J Diabetes Investig. 2017; PMID: 28963752