有能な薬剤師の条件とは?〜患者さんのもつ「ストーリー」を引き出せ,ちゃんと「言葉」を補って対話せよ〜

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患者のもつストーリーに思いを馳せよう

現場で毎日毎日,自分なりに患者さんご家族さんに対して誠実に対話をしている中でふと思ったことを呟きました.
そこまで大きな意味もないしこれが全てにおいて今後も当てはまるわけではないことくらい百も承知です.

ただ,自分なりに人さまの人生に対してどうお手伝いできるか,「薬と健康」という視点から,薬剤師としてどう患者さんお客さんに自分を使ってもらえるのか,そんな風に考え続けて,小さな失敗を重ねながら行き着いた今の所の最適解だと自負しています.

対話が上手な人を観察していると,やっぱり「聞き上手」ってのは古今東西正しいなぁと思います.
それと同時に,「話させ上手」ということも聞き上手の条件に含まれるとぼくは考えます.

「ああこの人なら自分の歴史や内面を打ち明けていいかなぁ」

そんな風に感じてもらえれば信頼関係はほぼほぼ構築できたと断言していいでしょう.

 

卑近な例ですが,ぼくの医療面接・相談にかかる時間は長い時は本当に長いです
下手をすれば小一時間くらいは本気で話をします.
もう,他の薬剤師・事務さんたちの仕事を圧迫してしまうくらい.
(いつもすみません本当に…

それは,自分がまだまだうまい具合に会話を終了させることができないという未熟さの現れであることは全く持ってその通りなのですが,

患者さんご家族さんが本当に本気で言葉を重ねて身の上話をぼくにしてくださる

からなんですよね.言い訳と言えばそうですが…

一人一人みなさま「病」に至るまでの歴史は当然異なります.
だから,同じ「病気」でも同じ「薬」でも,患者さんご家族さんの解釈や想いは同じであるわけがありません.そういう事実に気づくと,教科書上の知識だけを網羅したような紋切り型のセリフや,もしくはたとえ最新で最良の論文情報があったとしてもそのエビデンス「だけ」では相手の心に響くような「言葉」をかけることは不可能です.ここは断言します.異論は認めません.

知識や情報を上手に加工して,
相手がちゃんと理解できて,健康という人生の最重要課題に対するより良い決断の支援をする

ことが僕らの仕事のど真ん中です.ここは外しちゃだめです.

どうやって相手からストーリーを引き出すの?

ではどうやって患者さんからストーリーを引き出すか.
ここでみなさん悩まれているのかもしれません.

かもしれない,と言ったのは,申し訳ないんですが,

自分は患者さんから状況を聞き出すのにほとんど苦労したことがない

からなんですよね.
自慢話のように聞こえますが…

ただ,ほんのちょっとした言葉や態度の違いのようにも思うんです.それが実は大きな差かもしれませんが.

そうですね,たとえば…

しんどそうにしていたら,「今お話しても大丈夫ですか?」「食後の薬が出ているけれどご飯食べられていますか?」「夜眠れてますか」…etc

悲しそう・いつもど比べて元気なさそうにしていたら,「今日はお話は控えた方がいいですか?」「もしよろしければお話しますからなんでも打ち明けてくださいな」「ここはどんなことでも話せる場所ですよ,薬局なんですから」…etc

嬉しそうにしていたら,「何かいいことあったのですか?」「この前より笑顔が増えましたね.いいことですよ」「ニコニコしているところ,久しぶりに見ましたよ.ぼくも嬉しいです」…etc

怒っている・不満そうにしていたら,「何かいたらぬ点がありましたでしょうか?」「もしかして他でなにか嫌なことでもあったんすか?」「怒りはむしろここで爆発させちゃいましょう.大丈夫,怒ったまま家に帰った方が問題ですから」… etc

薬に対する想いや症状について話してくれたら,「お話してくださってありがとうございます」「言いにくいこともよくお話してくださりましたね.ありがとうございます」…etc

患者が帰る時には,身支度して席を立つまで見守り,立ち上がってから「帰りもお気をつけて,お大事に」と声をかける

…などなど.

薬のことや病気のことを聞いたり話したりする前に,自分はなるべく上記のような「ひとこと」を加えるようにしています.

これが全てうまくいく「魔法の言葉」だとはこれっぽっちも思ってないです.けれども,会話を円滑にするめるための潤滑油の一滴になれたらいいなぁ,なんてぼんやり淡く期待しながら,相手の表情を観察しつつ言葉を選ぶ習慣はつけています.

反対に,こういう一連の掛け合いを経ないと薬の説明なんて十分にできないでしょう.
いくら薬の責任者だからと言って,いくら専門的な知識や知恵があっても相手が聞き入れる状態じゃなければそれは無駄な知識に成り下がってしまいます.

ちょっとした言葉をかけるだけで,意外と人って喜んだり驚いたり感動したりと,感情が動くものでしょう.反対にちょっと言葉が足りないだけで,相手が怒ったりがっかりしたり失望したり,なんてリスクもあるでしょう.

まとめ

まとめると,

患者にはストーリーがあることを意識する→言葉をかける→言葉の反応をみてさらに言葉を補う→相手のストーリーと想いを引き出す→ストーリーを咀嚼して想いと共に相手に返す・その過程で薬や病気の専門知識を織り交ぜる→相手の理解度を確認しながらまた言葉を引き出す・自分も補って返す→…

非常に面倒な過程やもしれません.

でもですよ,よくよく考えると,

人間がいちばんめんどくさいじゃないですか

そのめんどくささに対面し続けることが医療者の仕事でしょう.薬剤師の仕事でしょう.そこは逃げずに腹くくって,けれども時には息抜きながらも愉しんで仕事しようじゃないですか.

薬剤師の仕事が,今よりももっと楽しく魅力的になれるように.
患者の未来が明るくなれるように.