高齢者の血圧は低いほうが問題?!〜現時点で言えることは?〜

frail_elderly_hypertention 高齢者薬物療法
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pharmasahiroです.
前回に引き続いて高齢者と血圧についての続きを.

Q3:弱っている高齢者でも血圧が高いと治療すべきなのでしょうか?

A3:個々の研究間で結果が異なり現時点ではよくわからないが,少なくとも高いほうがダメ・低いほうがいいとは決して言えない

高齢患者の中で特に虚弱(フレイルとも言いますね)な人でも
高血圧ならば治療は推奨されるのか?

という臨床疑問に対して,
これまでにいくつか論文が出ているのでご紹介いたします.

虚弱の有無に関わらず血圧は厳格にコントロールすべき?(ランダム化比較試験のサブ解析)[1]

SPINT試験のサブ解析では,
米国の75歳以上の糖尿病ではない高齢者でも,虚弱の有無に関わらず,
収縮期血圧の目標値を120mmHg未満と厳格にコントロールすると,
140mmHg未満のコントロールと比較して,
心筋梗塞・急性冠症候群・脳卒中・心不全・心血管死亡の複合アウトカムが少ない.相対危険は0.66(95%信頼区間: 0.51~0.85)

こちらはサブ解析であって,
つまりメインとなる試験からの後出しされた結果です.
よって,仮説検証的と言うよりはむしろ仮説生成的な側面が強く,
この結果だけを持って虚弱高齢者でも血圧は管理すべきとは言えないとわたしは考えます.

施設患者ではむしろ血圧が低いと死亡が多い?(観察研究)[2]

スウェーデンの介護施設に居住している高齢者406人(平均年齢85歳)のうち,
収縮期血圧が120-139mmHgの人に比べて,
120mmHg未満の人のほうが,
30か月間での総死亡が多い.相対危険は1.56(95%信頼区間 1.08〜2.27)
心不全の診断やBMI,合併症の数,年齢・性別を調整しても結果は変わらず.
また140mmHg以上では有意差なし.
また、服用している降圧薬の数にも差が見られませんでした.

こちらもあくまで観察研究であり明確な結論は出せませんが,
介護が必要な高齢者に対して,
何歳になっても血圧が低いほうがよいと言うのはおかしいように思います.

 

この他にもイギリスでの観察研究では80歳以上の高齢者では虚弱の程度によっては血圧に関係なく,
また治療の有無に依らず死亡リスクが高めであると言う報告もありました[3]

現時点で言えることは思ったほど少ない

やっぱり一概に「虚弱だから血圧は○○くらいの値でいいでしょう」とは言えない歯がゆさがあります.

日本もこういったところに焦点を当てて研究をすればいいのになぁと切に思うところがあります.

どんな人に,どれくらいの降圧目標値を定めて,
どれだけの薬剤をどれだけの期間投与すればいいのか,

まだまだ医療の世界はわからないことだらけですね.

ネタが満載,と思ってポジティブに捉えましょう.

今日はここまで.
それでは▽

参考文献

[1] Williamson JD, Supiano MA, Applegate WB, et al. Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016;315(24):2673-82. PMID: 27195814
[2] Rådholm K, Festin K, Falk M, Midlöv P, Mölstad S, Östgren CJ. Blood pressure and all-cause mortality: a prospective study of nursing home residents. Age Ageing. 2016;45(6):826-832. PMID: 27496923
[3] Ravindrarajah R, Hazra NC, Hamada S, et al. Systolic Blood Pressure Trajectory, Frailty, and All-Cause Mortality >80 Years of Age: Cohort Study Using Electronic Health Records. Circulation. 2017;135(24):2357-2368. PMID: 28432148