コレステロール値は善玉と悪玉の比が大事?

pharmasahiroです.

健康診断の結果を持参された患者さんから,
「コレステロールって悪玉とか善玉とか言うじゃん?それぞれの値が良くてもその比がダメだった病院で言われたけれどどう言うこと??」
といった類の質問を受けることがままあります.

LDL-c/HDL-c
と言う,悪玉コレステロール値と善玉コレステロール値との比,
いわゆる「L/H比」というヤツです.

ネットで軽く日本語で調べて見ると,その比が3.0では危ないだの,
2.0だとか1.5だとか,それくらいの数値に抑えると良いだと,
(だたし根拠が明記されてない!)
と言われていますね→LH比とは?

自分も正直そこまで気にしてはいなかったのですが,
この際本当にL/H比の数値が高いと,健康上どんな問題があるのか,
その根拠を探して見ましょう.

Googleでいつも通りに,
「LDL HDL ratio pmc」で検索.

【見つけた論文】
Is High Serum LDL/HDL Cholesterol Ratio an Emerging Risk Factor for Sudden Cardiac Death? Findings from the KIHD Study.
Kunutsor SK, Zaccardi F, Karppi J, Kurl S, Laukkanen JA.
J Atheroscler Thromb. 2017;24(6):600-608.
PMID: 27784848
PDFはこちらよりダウンロード可能です.

【論文のPECO】

どんな患者に 42-61歳のフィンランド人男性2616人
何をすると L/H比が2.3以下
何と比較して L/H比が2.3より大きい
どうなる? 心臓突然死のリスクが変化するのか?

フィンランド人(それも男性)を対象にした観察研究のようですね.
本文を見るとわかりますが,追跡期間が中央値23.0年(!)であり,対象年齢と,コレステロール値によるアウトカム発症までの年月を考えると,そこまで短すぎる観察機関ではないと思っております.
(と言うより,さすが欧州.きちんとデータを出す姿勢は日本ももっと見習って欲しいものです.まぁ日本にも久山町研究と言うものもありますが)

調整した交絡因子:
年齢,試験期間(追跡期間),BMI,収縮期血圧値,喫煙の有無,飲酒量,身体活動度,教育を受けた年数,糖尿病の有無,心筋梗塞の既往,冠動脈疾患の家族歴,血清高感度CRP値

【結果は何か?】

L/H比 ≦2.30 2.30−2.86 2.87−3.44 3.45−4.22 >4.22
心臓突然死者数 25/523 36/523 35/524 65/523 67/523
HR[95%CI] 1.00(reference) 1.08[0.64−1.82] 1.16[0.69−1.95] 1.96[1.22−3.15] 1.94[1.21−3.11]

L/H比が3.45を上回ると,それ以下と比較して,20数年後の心臓突然死のリスクが上昇するようです.
日本語でのサイトにあった情報はあながち間違いでもないようです.

しかしながら,日本人は欧米人と比較してそもそも心臓疾患のリスクがおよそ1/10程度であると考えると,
(WOSCOP studyとMEGA studyの結果より概算)
たとえリスクが上昇するとはいえ, 絶対値としてはそこまで大きくないのではないか,という見方もできるのではないでしょうか.
(男性のみの検証結果をそのまま日本人に外挿できるのかという視点もあります)

ちなみに,日本人でのデータがないか調べてみると,有料ではありますがこちらの論文があります.
Predictive value of lipoprotein indices for residual risk of acute myocardial infarction and sudden death in men with low-density lipoprotein cholesterol levels <120 mg/dl. Tanaka F, Makita S, Onoda T, et al. Am J Cardiol. 2013;112(8):1063-8. PMID: 23831165

こちらによると,LDL-C値が120mg/dl未満(つまり正常)の,心血管疾患の既往もなく薬も飲んでいない40歳以上の男性7,931人を平均5.5年追跡したところ,
L/H比が1.9を越えると急性心筋梗塞および突然死の発症リスクが高くなるようです(HR = 1.25, 95% CI: 1.04 to 1.51).
追跡期間の短さや,調整した交絡因子が抄録からでは不明であること,さらには突然死だけでなく, 急性心筋梗塞を合わせることでアウトカムの検出力を無理やり上げているだけのような結果にも見えなくはないのですが,
少なくとも日本人男性においても,L/H比の高値と心臓死(ならびに急性心筋梗塞?)の発症リスクとの関連は示唆されているようです.
(絶対リスク差としてどれくらいのものなのか非常に気になりますね...)

女性に関してはどうなのでしょうか.
それに,仮にL/H比と心臓疾患および死亡との関連があったとして,それをスタチンなどで治療することで,
未投薬と比較して本当にリスクが減るのでしょうか?

疑問が新しい疑問を読んでおります.
このあたりも,追ってまた記事にしようと思っております.

今日はここまで.
それでは▽