偏頭痛の薬を飲んでいると心臓などに負担がかかるのでしょうか?

【私的背景】
トリプタン製剤は血管を収縮させるという薬理作用から,もしかしたら心臓の血管や脳血管に良くない影響があるのでは?
という疑問から論文を探してみました.

【見つけた論文】
Roberto G, Raschi E, Piccinni C, et al.
Adverse cardiovascular events associated with triptans and ergotamines for treatment of migraine: systematic review of observational studies.
Cephalalgia. 2015;35(2):118-31.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25246519

エルゴタミンやトリプタン製剤の使用と脳卒中などの心血管イベントの発症の有無を検討した,観察研究のメタ分析です.
この報告ではエルゴタミンでは発症リスクが増加しているのですが
(OR 2.28, 95% CI 1.18-4.41; I (2 )= 0%)
トリプタン製剤では有意な増加はなかった
(OR 0.86, 95% CI 0.52-1.43; I (2 )= 24.5%)とされます.

また別のケースコントロール研究によると,そもそも偏頭痛患者では脳卒中や急性冠動脈症候群を発症しやすい傾向にあるようです.
Osler M, Wium-andersen IK, Jørgensen MB, Jørgensen TSH, Wium-andersen MK.
Migraine and risk of stroke and acute coronary syndrome in two case-control studies in the Danish population.
Clin Epidemiol. 2017;9:439-449.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28919819

[Stroke(N=155,216)]

患者層 脳卒中case(%) control(%) OR(95%CI)
<50歳 360(0.23) 79(0.05) 4.28(3.33-5.01)
≧50歳 614(0.40) 324(0.21) 1.77(1.54-2.03)

[急性冠動脈症候群(ACS N=97,799)]

患者 ACS case(%) control(%) OR(95%CI)
全偏頭痛診断 268(0.27) 145(0.15) 1.69(1.36-2.09)

ただし,この研究では組み入れ患者にすでに偏頭痛治療薬であるトリプタン製剤やエルゴタミンが投与されており,
いわゆる「卵が先かニワトリが先か」という時勢の問題はあるとは思います.
さらにこの症例対照研究ではむしろトリプタン製剤服用群で脳卒中や急性冠動脈症候群の発症が多いという結果となっております.

[Stroke]

服用薬 脳卒中case(%) control(%) OR(95%CI)
Triptans 3986(2.56) 3392(2.16) 1.21(1.15-1.27)
Ergotamine 1382(0.89) 1283(0.82) 1.06(0.98-1.14)

[急性冠動脈症候群]

服用薬 ACS case(%) control(%) OR(95%CI)
Triptans 1451(1.58) 1421(1.43) 1.15(1.07-1.25)
Ergotamine 273(0.28) 308(0.31) 0.88(0.74-1.05)

【で,明日からどうするの?】
とある研究では偏頭痛治療薬と心血管イベント発症との関連がある,また別の研究ではない,というcontroversialなところが現状のようです.
また,関連があったとしても,うん十万人に対して数パーセント同士の増減を比較している,というくらいで,
絶対リスクとしてみれば,ドングリの背比べのようなレベルの増減だと思っております.

もちろん,観察研究の結果であり交絡因子などの影響はあるとは思いますが,少なくとも偏頭痛による苦痛を我慢してまで薬の使用を控えることはないとは思います.

今日はここまで.
それでは▽

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