高齢者でも脂質異常症の治療は継続した方が良いのでしょうか?

【薬局でのとある会話】

患者さん:「もう70歳にもなったし,そろそろ薬なんて飲みたくないんですよね.こんな年寄りでもコレステロールとかの薬の恩恵なんてあるのかしらね」

わたくし:「あまり自分を卑下しちゃダメですよ.そうですね…(パソコンを見ながら)」

今日はこんな疑問について綴ってみます.

【臨床疑問の定式化】
浮かんだ疑問をEBM (Evidence Based Medicine: 科学的根拠に基づく医療) の手法に則って, PECOで定式化しましょう.

P: 高齢脂質異常症患者

E: 脂質異常症治療薬を飲む

C: 脂質異常症治療薬を飲まない or 途中で止める

O: 薬の恩恵???(寿命が延びる?)

【本日のお題論文】
Alpérovitch A, Kurth T, Bertrand M, et al.
Primary prevention with lipid lowering drugs and long term risk of vascular events in older people: population based cohort study.
BMJ. 2015;350:h2335.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25989805
PMID: 25989805

【論文のPECO】

P: community dwelling population of older people

(7484 men and women (63%) with mean age 73.9 years and no known history of vascular events at entry)

E: lipid lowering drug use (statin or fibrate) : 2048人

C: non-use : 5436人

O: long term risk of coronary heart disease and stroke.

T: 前向き観察研究(follow-up was 9.1 years)

【批判的吟味】

・真のアウトカムか?

真のアウトカム

・調整した交絡因子は何か?

sex and study centre, diabetes (yes, no), body mass index(<25, 25-29, ≥30), smoking (never, past, current), drinking alcohol (never, past, current), hypertension (yes, no), arrhythmia (yes, no), antithrombotic drugs (yes, no), triglyceride concentration (thirds), and low density lipoprotein to high density lipoprotein cholesterol ratio (thirds).

【結果は?】

outcome 薬剤使用なし 薬剤使用あり HR (95%CI)
coronary heart disease or stroke 545 events 187 events 0.91 (0.76-1.09)

【結果を踏まえてどうする?】

本文では「脂質異常症治療薬によって高齢患者でも脳卒中の発症リスクが30%低下する」と結論付けられておりますが、

結果の一番上段にあるのは冠動脈疾患および脳卒中であり,これがおそらくプライマリアウトカムではないかと思われます.

たしかに脳卒中のみの解析では統計的には有意差はあるものの (HR 0.66, 95%CI: 0.49 to 0.90),これはいいとこどりの強調なのではないかと自分は思います.

お薬にお金をかけて健康でいようとビクビクするよりも,そのお金を美味しいものや大切な家族や友人と過ごすことに活用したほうがいいのかな,論文を読んでそんな風に感じました.

今日はこれにて.

それでは▽

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